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政治経済 ビットコインをめぐる情勢とエルサルバドル

政治経済 ビットコインをめぐる情勢とエルサルバドル

こんにちは。

exit.です。

今回は、ビットコインを巡る情勢のアップデートをしたいと思います。


2021年6月8日に中南米の国のエルサルバドル共和国がビットコインを法定通貨とする法案を賛成多数で可決しました。世界初の暗号資産を法定通貨として認めた国としてニュースで取り上げられました。


エルサルバドル共和国は人口600万人ほどの国で、GDPは221億ドルほどです。自国の法定通貨としてはアメリカドルを使用していましたが、ここにビットコインが加わりました。現在の大統領はナジブ・ブケレ氏が務めています。世帯主の多くがアメリカなどに出稼ぎに行っており、海外送金でエルサルバドルに残った家族に生活費を送金しています。ビットコインを法定通貨とした理由に海外送金の手数料の高さを上げていました。また、同国は銀行などの金融サービスにアクセスできない層も多く存在しており、銀行口座がなくても金融サービスを受けることができるようになる、というメリットの享受を目指しています。そして、ブケレ大統領は、ビットコインのマイニングによる大量の電気消費に伴う環境負荷への批判を和らげるために国営の電力企業に対して、再生可能エネルギーである地熱発電の利用を検討するように指示を出しています。


ビットコインのメリットを享受するために法定通貨として加えたのですが、投機の対象となっている資産を法定通貨として利用することに対しては警戒感があります。資産価格が上がる局面であれば、インフレ圧力となる一方で、資産価格が下がる局面であれば、デフレ圧力となります。物価の安定性という面から見た場合には警戒を行うべきと考えられます。また、銀行を通さない送金が可能になるため、マネーロンダリングをはじめとした犯罪の経済取引に利用される可能性も無視はできません。


エルサルバドル共和国の今回の決定は、壮大な一つの社会実験となっています。これが失敗した場合には、自国の国民への負担が増大するだけではなく、暗号資産への規制の強化を促す可能性もあります。


また、テスラのCEOイーロン・マスク氏が再生可能エネルギーの使用量を増やせばビットコインでのテスラ車の支払いを再び認める旨をTwitterで発言をしたことで上昇をしています。テスラはビットコインを保有しており、価値の増減が企業の財務に与える影響について考える必要もあります。保有している間の評価損については、計上する必要がある一方で、値上がりをしても利益は計上できず、売却時にならないと利益計上ができないのが今の会計のルールとなっています。そのため、企業はビットコインを法人の余剰資金で購入することには慎重になっています。企業の多くは国債や社債などの債券を主に余剰資金の運用先として選んでいます。企業のCFO(最高財務責任者)は、企業の財務に大きな影響を与えるような投機に近い取引については行わず(株主への説明ができないため)、非常に保守的な債券投資を主に行います。今後もこの企業側の投資資金の先としてビットコインが選ばれる可能性は高くはないと考えられます。


そして、ビットコインのEFTの上場申請が複数なされていますが、現時点では申請が通ったものはなく、SECも判断を先送りしています。年内にはいくつかのビットコインETFの申請に対して結論が出されるのではないかと思います。その結果含め、慎重に見守る必要が高いと思われます。


以下は前回ビットコインをめぐる情勢について取り上げたコラムへのリンクです。ご参考までにお読みいただければと思います。


次回も皆様もお役に立つ情報を発信していきたいと思います。


本コラムは、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。投資判断は投資家の皆さまの自己責任でお願い致します。


※本コラムは2021年6月15日の情報に基づいて執筆しています。