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投資の基礎 財務諸表編 第3回 損益計算書

投資の基礎 財務諸表編 第3回 損益計算書

こんにちは。

exit.です。

今回は、損益計算書についてもう少し詳しく見ていこうと思います


以前のコラムで、損益計算書は一定期間の企業の経営成績を表示することを目的として作成されます、と書きました。そして、この損益計算書は企業の収益性を測るためのものでもあります。収益(どのくらい売上を上げたのか)、費用(どのくらい経費を使ったのか)、利益(売上-経費がどのくらい残っているのか、もしくはマイナスになっているのか)がこの損益計算書からわかります。


また、貸借対照表との関係ですが、損益計算書の当期純利益が貸借対照表の純資産の部に反映されます。次回取り上げる予定のキャッシュフロー計算書との関係では、損益計算書の税引き前当期純利益が営業活動によるキャッシュフローの最初の税金等調整前当期純利益の欄に来ます。ここから財務三表が互いに密接に関わっていることが分かっていただけると思います。


損益計算書でのチェックポイントですが、特に注目するべきところは営業利益です。例え当期純利益が黒字で着地をしていても、中身を見ると営業外収益や特別利益でプラスになっている場合もあります。営業利益が出せていないということは通常の企業の営業活動で利益を生み出せていないことを意味します。営業赤字の状態が続く企業は根本的な事業の見直し及び経費削減の実行が必要になってきます。


損益計算書を利用した分析もあります。

売上総利益率=売上総利益(粗利)÷売上高×100

売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100

売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100

売上高当期純利益率=当期純利益÷売上高×100

これらの数値は高いほど効率よく利益が上げられていたり、商品の付加価値が高いことを意味しますが、他の同業他社との比較でその企業の特徴や課題が分かったりします。


また、貸借対照表と組み合わせて分析を行うものもあり、その代表例がROEの分解(デュポン方式と呼ばれます)です。通常のROE(株主資本利益率)は

ROE=当期純利益÷自己資本(株主資本)×100

ですが、デュポン方式では

ROE=売上高当期利益率×総資産回転率(売上高÷総資産)×財務レバレッジ(総資産÷自己資本)

で表されます。そのためROEを上げるためには売上高当期利益率を上げるか、総資産回転率を上げるか、財務レバレッジを高めるかのどれか(もしくはすべて)になります。ただし、財務レバレッジを高めると今度は財務面からの安定性が毀損する結果になりかねないため、利益率を高めて、総資産回転率を高めることが健全ではあります。そのためにも効率的に売上を上げ、利益を上げていく施策が企業には必要になってきます。投資対象の企業が高収益型なのか、高資産回転型なのか、負債型なのかを分類して考えることも大切なのではないかと思います。

※大切なのは、ROEを高めるために3つすべてを行う必要はないこと、及び適度な借り入れは事業にとってプラスになり、必ずしも借り入れが悪いわけではありません。


最後に近年ではIFRS(国際財務報告基準)やUSGAAP(米国の会計基準)を使用して、財務報告(決算書の開示)を行っている企業も増えてきています。日本の会計基準での開示とは異なるため、違和感を覚えるかもしれません。ここでは、少しこの2つの会計基準での損益計算書にも触れておこうと思います。まず、IFRSには経常利益はありません。つまり、「営業利益+営業外収益+特別利益-営業外費用-特別損失」がそのまま税引き前利益となります。さらに、継続事業からの損益と非継続事業からの損益を分けて表示しないといけない、という決まりがあります。その他包括利益には、為替や有価証券などの評価損益が表示されます。米国の会計基準も基本的には同じですが、細かく個別論点を見ていくと差異が多くありますが、ここではあまり深く立ち入らないようにします。

※例えば、有価証券の売却益は、日本の会計基準では特別利益に計上されますが、IFRSだと計上不可、米国の会計基準ではその他収益の構成項目となります。ほかにもこのような違いがあるため、企業がどの基準を使っているのかを把握することが必要になります。


次回も皆様のお役に立つような情報を発信していきますので、宜しくお願いします。


※本コラムは情報の提供を目的としています。投資はくれぐれも自己責任にてお願い致します。