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世界経済 フィリピン編 第2回目

世界経済 フィリピン編 第2回目

こんにちは。

exit.です。

フィリピン編の第2回目で、フィリピンの出稼ぎ労働者と出稼ぎ労働者の問題点及び出稼ぎ労働者が為替市場に与える影響について書いていきたいと思います。


フィリピンにおける出稼ぎ労働者

海外への出稼ぎに出ている人数は人口の約1割の1,000万人を超えています(2013年末では1,024万人と推測されています)。フィリピンは公用語が英語になっている国でありさらに、訛りが少ない英語が話せることが出稼ぎにおける大きな武器の一つになっていると考えられます。私が出張した際はクリスマスが近いということもあって郵便局に多くの人が詰めかけていましたが、おそらくは海外向けへのクリスマスプレゼントを贈るためではないかと感じました。また、地域別では、アメリカが多く、その次に中東(サウジアラビアやアラブ首長国連邦など)が来ています。


出稼ぎ労働者が多くなる理由

フィリピン国内に雇用(仕事)がないこと及び、国内にとどまっても給料の低い仕事に就くしかない可能性が非常に高いことが影響しています。また、フィリピンの失業率の高さはほかの東南アジア諸国と比較しても高くなっています(フィリピンの2018年の失業率は5.3%と発表されています)。このことは、フィリピンからの労働力及び頭脳の流出を招いているため、長期的な国の発展にはマイナスと考えられます。


次に為替市場(フィリピンペソ)に与える影響に関してですが、出稼ぎ労働者の送金はフィリピンペソの安定のために一役買っています。海外からフィリピンへの送金を行うことによって、外貨売りのフィリピンペソ買いの取引が起こっているためです。また、出稼ぎ労働者によるGDPへの貢献が1割ともいわれるため、為替市場を大きく支える力になっています。

ただし、これがフィリピンにとって本当に良いことかどうかは、意見が分かれるところだと思います。出稼ぎ労働者の多大な海外送金の結果、フィリピンの国際収支は経常収支黒字になっています。国際経済学では、経常収支の黒字の継続は、長期的に見た場合、その国の通貨高につながり、その逆に、経常収支の赤字は長期的に見た場合には、通貨安につながる、とされています。ここでは、フィリピンの産業(特に製造業)が発達しない→雇用がないため出稼ぎ労働に出る→出稼ぎ労働者が海外送金を行う→経常収支は黒字となり、フィリピンの通貨は安定するという図式になっています。

フィリピンの市場のプライスボード。価格は政府が決めますが、必ずこの値段にしないとならない、というわけでもありません。


ここで、国際収支の発展段階説について解説しておきます。フィリピン経済について考える際の参考になると考えているからです。

経済発展において、初期の段階では国内貯蓄が不十分なため、開発のための投資に必要は資金を外国に頼ることになります。この時期には、経常収支は赤字となります。この段階においては、国は債務国となり、投資収益収支も赤字となります。外国からの投資によって、国内産業に投資を行うことにより、産業が発展していくと今度は、輸出が増えて経常黒字に転じていきます。この段階でもまだ債務国ではあるが、返済が始まるため、債務返済国となります。やがて、対外債務の返済が完了し、投資収益収支も黒字となります。この段階で、債権国へと変わっていきます。やがて、国際競争力が弱まることによって、貿易収支が赤字に転落しますが、経常収支は黒字が続きます。貿易収支の赤字が、経常収支の黒字より大きくなると、最終段階として、今までの対外債権を取り崩す段階に入っていきます。これら一連の流れが、国際収支の発展段階説と呼ばれるものです。


フィリピン編の最終回となる次回では、フィリピン経済の今後と課題について考えていきたいと思います(次回も国際収支の発展段階説にももう少し触れていきます)。


参考資料

出稼ぎ労働者についてまとめられた論文です(日本語)。

http://www.ide.go.jp/library/Japanese/Publish/Download/Report/2016/pdf/C17_ch02.pdf

以下のサイトでフィリピンの統計データを見ることができます(英語)。

http://www.psa.gov.ph/