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世界経済 Silicon Valley Bankの経営破綻について

世界経済 Silicon Valley Bankの経営破綻について

こんにちは。

exit.です。

今回は3月9日(木)にニュースとなったSilicon Valley Bank(以下、SVB)の取り付け騒ぎ(Bank run)及びその後の経営破綻について取り上げたいと思います。


SVBは1983年に設立された商業銀行でカリフォルニア州サンタクララに本拠を置いていました。持ち株会社であるSilicon Valley Financial GroupはティッカーSVIBでNASDAQ市場にて取引されていました。2022年年末の時点では総資産が2,092億ドル(1ドル=135円計算で約28兆円)であり、ハイテク企業やバイオ企業のようなベンチャー企業を顧客として貸出やベンチャーキャピタルへの出資などを積極的に行っていました。このモデルは、金融緩和(特にコロナ禍での史上最大規模の金融緩和)を追い風として資金調達意欲の高いベンチャー企業から巨額の預金を集めることに成功し、その潤沢な資金を米国の長期債券や住宅ローン担保証券(MBS:Mortgage Backed Securities)などで運用していました。ところが、この状況は2022年からのFRBによる急激な利上げによって一気に変わっていきます。急激な利上げに伴うベンチャー企業の資金繰り悪化(Cash burn)により預金の流出が相次いだため、2023年3月8日(水)に2023年の第1四半期の中間決算で預金残高の減少による資金確保のために210億ドルの債券のポートフォリオを売却し、18億ドルの損失を計上したことを発表しました。SVBの2022年の年間の利益は12.8億ドルでしたので、1年間の利益を吹き飛ばすほどの巨額の損失です。銀行側はこの損失の穴埋めをするために23億ドルの資金調達(追加の株式発表)を行うと発表しましたが、3月9日(木)には信用不安から取り付け騒ぎが起こることとなり、SVBの株価はおよそ60%下落しました。株価の大幅な下落を受けて3月10日(金)には追加の増資が破断することとなり、経営破綻することとなりました。


FDIC(Federal Deposit Insurance Corporation:米国預金保険公社)が保証をする25万ドル以上の預金を持つ顧客の預金がどのように保護されるのかどうかが今後の焦点となります。これが保護されない(もしくは保護が不十分とみなされた)となると似たような状況に置かれていると考えられるほかの銀行にも取り付け騒ぎが拡大することとなり、経済に与える影響が非常に大きくなります。今回の問題点は、このSVBのリスクの管理体制にあるとも言われています。短期資金を長期の投資対象で運用していたことが問題視されています。

※3月13日時点で、ジャネット・イエレン米財務長官、ジェローム・パウエルFRB議長及びマーティン・グルーエンバーグFDIC総裁がすべての預金者を完全に保護する方針を固めています。また、シグネチャー銀行の経営破綻も発表されています。こちらも預金者は保護されるとのことです。


SVBの破綻はリーマンショックが起きた2008年以来の最大規模の経営破綻となります。この件がニュースとして取り上げられた日は株式市場では銀行株を中心に大きく値を下げることとなりましたが、債券には資金が流入し価格が上昇(利回りの低下)し、ドル円は円高に振れました。ベストシナリオは、大手の銀行などに吸収合併されることで、次善シナリオは、SVBだけの問題で収まることで、ワーストシナリオはほかの銀行も連鎖破綻につながることです。まだどのシナリオになるかはわかっていません。また、この件を受けてFRBが金融政策を変更するのか、かまわず利上げを続けるのかも不透明です。一部の機関投資家は、無理な利上げはできず、ターミナルレートは低くなるのではとの予想もしていますが、インフレ率の高止まりを避けたいと考えるFRBが利上げの停止を早めたりする、金融緩和的な政策に変更してくるというシナリオは楽観的な感じもします。しばらくの間は動向を見守っていく必要があると思います。


以下のリンクが今回のSVBの発表資料です。英語になり専門用語も多く非常に読みづらいと思いますが、興味のある方は是非チャレンジしてみてください。

https://ir.svb.com/events-and-presentations/event-details/2023/Q123-Mid-Quarter-Update/


次回も皆様のお役に立つ情報を発信していきます。


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